11月2日スピード矯正研究会勉強会の要約

2017年11月2日勉強会 要約

Effect of low-level laser on the rate of tooth
movement

Su Jung Kim,DMD,PhD,Michelle Yuching Chou,DDS,MPH,and
Young Guk Park,DMD,MS,PhD,MBA

(Seminars in
ORTHODONTICS 2015; 21:210-218.)

 

今回の勉強会は、『低レベルレーザーが歯の移動速度に及ぼす影響』についてです。

【要約】

低レベルレーザー療法(以下、LLLT)は、歯の移動を促進するための生体刺激効果によって歯周組織の代謝回転を加速することが示唆されている。

この(今回の勉強会の)論文は、動物および(ヒト)被験者における歯列矯正歯の移動に及ぼすLLLTの生物学的影響に関する以前の研究をレビューし、歯列矯正治療における歯の動きを加速するための最適なプロトコールを設定することを目指している。

LLLTの生物刺激効果として、LLLTは赤色光と赤外光を使用して、軟部組織の創傷治癒過程を促進するだけでなく、炎症反応や痛みを光化学的作用で軽減させる。

歯列矯正歯の動きにLLLTが及ぼす影響について様々な動物研究があるが、その中で、著者らの以前のビーグル犬の論文研究では、動物をcorticisionおよび/またはLLLTを照射した。corticisionを行った群の歯の移動速度は、対照群の2.23倍に増加、LLLT群は、2.08倍の増加であった。しかし、LLLTをcorticisionと組み合わせた群では、対照と比較して移動はむしろ抑制された。著者らは、LLLTが歯の動きを促進するのではなく、主に外科手術後の欠損部の治癒過程を促進する可能性があると結論付けた。

動物研究の結果は、歯の動きの速度がエネルギーの適切な量で強化されることを示唆したのに対し、抑制効果は過剰摂取で現れ、歯の動きが不十分なエネルギー量から効果を受けることはなかった。

一方、LLLTの臨床研究における以前の研究をまとめると、波長780~810 nmのGa-Al-As半導体レーザーは、レーザーの先端を歯肉表面に接触させることによって、5~20 J/cm2、2.0~8.0 Jの連続波が適用されたときに、歯列矯正歯の移動速度を加速することがわかった。

著書らは、唇側表面の4つの照射点(近心の2つの点、遠心の2つの点)、および舌側表面の別の4つの点を(矯正)移動させる目標歯の周りにLLLTを臨床応用することは、歯の動きを加速させるのに有効であることがわかったと述べている。

ヒト被験者における歯の動きを促進するのに必要なレーザーエネルギーの最適用量は、動物で推奨される線量とは異なるようであった。

歯の動きを加速するLLLTの効果は、動物実験およびヒト被験者の臨床試験ではまだ議論の余地がある。

レーザーの効果は、レーザーの波長、パワー、スペクトル面積、線量、適用周波数、および照射時間に依存して異なる結果をもたらすと著者らは述べている。

研究論文の大部分の所見が歯の動きを促進するのに肯定的な効果を示したが、いくつかの他の報告ではゼロ効果または阻害効果さえも報告されていた。

患者に負担をかけることになり得る高コストのレーザー装置、(長時間のチェアタイムにつながる)レーザーを使用する間に長い時間が費やされること、そして訓練を受けた人的資産の必要性といった、LLLTの使用に関するいくつかの問題を解決する必要がある。

LLLTの臨床応用に対する「ゴールドスタンダード」を決定するためにも、さらに満足の行くように実施された見込みのある臨床試験が不可欠であると著者らは述べている。

【結論】

LLLTによって引き起こされる生体刺激の特性および限界を理解することは、歯の移動速度の抑制に加えて、歯列矯正におけるより広い臨床的影響をもたらすであろう。

 

著者らも、今回の論文で述べていたように、『osteotomyやcorticotomyなどの刺激は、歯の動きの速度を速めるために提案された最初の処置の1つである』が、『これらの処置は、フラップの広範な歯槽骨の剥離による比較的侵襲的な外科的介入を伴う』ことも確かである。

しかし、それらの外科的介入を伴うスピード(加速)矯正が、(われわれ)スピード矯正研究会で学んでいる通り、現在、唯一のエビデンスを得ている現実を考えると、スピード(加速)矯正を患者に提案する場合、第一選択となる。もし、外科的介入を伴わずにスピード(加速)矯正を行うことができれば、患者や術者にとっても朗報となろう。そういった意味でも今回のLLLTの論文が、たとえ小さくとも1つの布石となれれば幸いであると思いました。

(担当:塩原 聡之)