スピード矯正研究会 特別講演

Drs. Federico Brugnami & Alfonso
Caiazzoコルチコトミー矯正講演会

Expanding the limits of safe orthodontics treatments.

 

4月29日、スルガ銀行東京支店にて特別講演会を開催しました。スルガ銀行二階ホールは窓から日本橋が見上げることができる素晴らしい場所です。

 

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画面中央がDr. Federico Brugnami

 

今回はスピード矯正研究会10周年記念として翻訳出版した「矯正歯科治療のためのコルチコトミー」の編著者を日本に招いての講演会であり、EPIC研修会、船越歯周病研修会との共同開催となりました。

日本歯周病学会の会長を務められた伊藤公一先生、奥羽大学歯周病学講座
高橋慶壮教授もお招きして、まさに今この場から日本の矯正学と歯周病学の連携が“加速”していくように感じました。

 

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講演後の記念写真

 

メインテーマは矯正治療における歯の移動を安全に行うための手法ということでした。

・矯正学的な見地から

コルチコトミーの併用による歯の動きの加速化は世界的にコンセンサスが得られた事実であり、現在はさらに踏み込んでコルチコトミーを行うタイミングsequential approachや部分segmental approachについてテーマとなっています。

また、より低侵襲なアプローチや、外科を必要としない加速矯正についてのエビデンスが今後も増え続けることは容易に予想されます。

Drs. Brugnami & Caiazzoから歯を動かす方向への骨補填材の移植について説明がありました。昨年のDr.
Wilckosも同様に歯を動かす方向への骨補填材の移植を行っていましたが、やはり人種によって歯を動かす方向の違いを感じました。

日本人は横顔のバランス、口元の形態の問題から舌側方向へ前歯を動かす場合が多くあります。

また、Dr.深澤の側方拡大ケースでは、骨補填材の移植を行わなくともコルチコトミー単独で骨増生が得られています。

人種の違いによる歯の移動方向および治療計画の違いについての意見を求めたところ、この点についてDr. Brugnamiは舌側への骨補填材移植も行うべきだと解答されていました。

個人的には舌側への骨補填材の移植は神経・血管および隙などの解剖学的な問題や、口腔内容積が狭くなること等の機能的な問題を十分に検討するべきだと考えています。

 

・歯周病学的な見地から

対して歯周病学的な見地からは、歯根を歯槽骨内に納めることの重要性がテーマになっていました。

近年の歯周病学の論文では歯肉退縮の原因の一つに矯正治療の既往が含まれています。また、矯正治療を行う前にCTを撮影して歯周組織の状態を把握することを勧めています

J
Periodontol.2017 Oct;88(10):960-977.
Cone-Beam Computed Tomography and Interdisciplinary
Dentofacial Therapy: An American Academy of Periodontology Best Evidence Review
Focusing on Risk Assessment of the Dentoalveolar Bone Changes Influenced by
Tooth Movement
)。

Drs. Brugnami & Caiazzoもまた、CBCTを撮影して矯正治療前の骨幅の確認と骨移植後の骨量を経過観察していました。

 

近年、マウスピース型矯正装置の認知度が上がり学術論文も多く発表されるようになりました。

しかしながら、歯の移動やマウスピースの素材についての文献数に対して、マウスピース矯正特有の診断については勉強会等で話される程度です。
或る勉強会では、マウスピース型矯正装置の矯正治療の場合、片側2㎜ずつの側方拡大を行うとされているそうです。ところが、普段我々がCBCTやSuresmileシステムで歯槽骨と歯根の位置関係を診断する限りでは片側2㎜、両側で計4㎜の拡大を行えるほどの骨幅が無いことの方が多いです。
矯正治療が歯肉退縮の原因になりうることを十分に理解・意識して、診断に基づいた拡大量の決定を行うこと、またこれを具現化できるシステムを利用することが成人矯正の主流になるべきですし、必要ならばコルチコトミーや根面被覆等の歯周外科処置も検討しなければならないでしょう。
イタリアではSuresmileが導入されていないそうですが、歯根を歯槽骨内に位置させるためのシミュレーションと、それを具現化できるシステムがSuresmileであることはDr.Brugnamiも認めていました。

 

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質疑応答時にコルチコトミーを併用したSuresmile症例を発表しました。

 

寿谷先生が提唱した成人矯正の問題点である3つの”R”、Resorption歯根吸収・Relapse後戻り・Recession歯肉退縮、これらをカバーするための手技として、コルチコトミーは大変有用であること、また、新しい技術であるCBCTそしてDigital Orthodonticsをコルチコトミー矯正に併用する事がより安全な矯正治療の提供に結びつくことを再認識できる講演会でした。

 

銀座矯正歯科 中嶋 亮

 

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編著者のお二人にサインを頂きました。来月にはProf. Divertのサインも加わります。

 

開催にあたり場所を提供していただいたスルガ銀行様、受付業務を担当していただいたバイオデント様、運営にご助力頂いたP.G.I.、西川先生に改めて御礼申し上げます。

 

銀座矯正歯科 中嶋 亮