アメリカのクレイトン大学で行われた研修に参加

今回はアメリカのクレイトン大学で行われた研修に参加しました。

クレイトン大学

クレイトン大学での研修内容は大きく分けて解剖学と矯正学でしたが、今回は解剖学の部分についてお話しします。

 

まず、私たち歯科医師と解剖は深い関係があります。

私たちが行う歯科医療は内科的な部分と外科的な部分に分けられるのですが実際の多くは外科的な治療となります。

歯を削る、歯を抜く、神経の治療をする、入れ歯を作る、歯並びを治す等は全て外科的な治療が介入します。

 

私たち歯科医師は学生の頃から、多くの分野を勉強します。免疫学や組織学、生化学や解剖学、薬学に細菌学等々、たくさんありますが、自分が思うに、良い外科的治療を行う上で、最も大切な科目を一つ選ぶのであれば、解剖学ではないでしょうか。

深く解剖学を学ぶことで、より良い医療が実践できることは間違いありません。

御献体を用いた解剖学実習は、医学・歯学の学生の教育課程で必ず行われる課程なのですが、

卒業後はなかなかその機会は無く、そこで、今回のような御献体を用いた解剖学実習に参加できることは非常に貴重だと思い、参加をしました。

実際の臨床経験を踏まえてから行う解剖学実習は

学生の時に行った時よりも、より具体的に理解する事ができました。

今回解剖学実習を指導してくださったのは、「ネッター頭頸部・口腔顎顔面の臨床解剖学アトラス」の著者であるニールsノートン先生に光栄にも直接指導して頂きました。

内容は私たちが普段行う臨床に密接した内容で、治療にとって非常に重要な部分ばかりを詳しく教えて頂けました。

例えば、下あごや上あごにある太い神経や血管がどこにどのように走っているのか、顎の関節はどのような構造でもし顎関節症になっているとしたら、どのような状態になり得るのか、などノートン先生の指導のもと、見ることができ、とても勉強になりました。

本で読むのと、実際自分たちで解剖するのとではやはりおおきく違い、本では得られなかった知識や、リアルなイメージを得ることができました。

自分は、患者さんの希望があれば歯を抜くこともするのですが、その際に傷つけてはいけない神経や血管があります。

当然、今までもそれらについては本で読んで知っていましたし、手術で傷つけたこともありませんでした。

しかし、今回は講義を受けた後にすぐにその部位を解剖して、実際にどのようになっているのかを、見ることができました。

これは普段は絶対にできないことです。

ノートン先生は神経や血管の走行は人によって個人差がある、通常と違う走行をしている場合は、事前にCTなどで分かる場合もあるが、わからない場合もある。

その場合、手術中に予期せぬ位置に血管などがある場合も実際にはよくあるが、もしこの血管を傷つけてしまったらどうしたら止血できるのか、また、そうならないためにはどこにメスを入れるべきなのか等、臨床にすぐに応用できるような、講義をして頂きました。

実は、今回の御献体は、ノートン先生がご尽力くださったおかげで、歯がある御献体でしかも、ホルマリンによる組織固定がまだ浅く、かなり生体に近い状態の御献体で実習をおこなう事ができたのです。

そのため、私たちは驚くほどリアルな感覚で解剖学実習を行うことができたもの、非常に貴重な経験となりました。

私たち矯正歯科医は、一般的には、なかなかメスをとる機会はありません。

それは、矯正治療以外の処置のほとんどを、他のドクターに依頼して、処置してもらうようにしている、矯正医が多いからです。

中には歯を抜いたことがない矯正歯科医もいるくらいです。

でも、私たちスピード矯正研究会のドクターは、多かれ少なかれメスを持ちます。

もしそうであるならば、私たちは解剖の勉強をする義務があると思います。

メスを持つ以上は、しっかりと解剖学を勉強し、より安全に手術を行えるように努力をするべきではないでしょうか?

今回の解剖学実習はその勉強の最高峰だったのではないかと思います。

また、自分で処置を行わないとしても、依頼をする以上は患者さんに説明をする意味でも正しい解剖学的知識を身に着けることは必須となり、患者さんに安心して、紹介先のドクターに処置して頂けるのだと思います。

つい先日、下歯槽神経に近接した危険な親知らずを抜歯しないといけない患者さんがいらっしゃいましたので、この知識を使い、手術の危険性を説明し、親知らずの頭部分のみを切断して、歯根の部分のみを矯正で引っ張りだして、危険な太い神経や血管の管から安全な距離に移動させてから再び残っている歯根を安全に抜歯するという治療計画をたてることができました。

すべてのドクターに同じ勉強が必要だとは思いませんが、少なくとも自分の臨床のなかには、非常に有用で、今後の患者さんのためになると確信できる数日間でした。

私たちは御献体に感謝します。

明日からより正確に一つのメス、一つのドリル、一つの装置を用いて行ける事でしょう。

担当:スピード矯正研究会 福本 卓真

担当:スピード矯正研究会 福本 卓真