9月28日勉強会
Systematic Review
Corticotomy-assisted orthodontic treatment
システマティックレビュー
コルチコトミーによる矯正歯科治療
A systematic
review of the biological basis and clinical effectiveness
Hassan AH,
Al-Saeed SH, Al-Maghlouth BA, Bahammam MA, Linjawi AI, El-Bialy TH.
Saudi Med J. 2015 Jul;36(7):794-801. doi:
10.15537/smj.2015.7.12437. Review.
:impact 0.56
要約
目的: コルチコトミー補助歯科矯正治療(CAOT)に関連するエビデンスの質を矯正治療の補助治療として評価するための文献を体系的にレビューする。
方法: この研究は、2013年から2014年の間に、サウジアラビアのジッダにあるAbdulaziz King大学の歯学部で行われた。さまざまな電子データベースが検索され、抄録が検索された。定義された包含基準は、2人の審査官による別の評価のために、得られた元の記事に独立して適用された。選択基準には、CAOTおよび/またはその背後にある生物学的原則のいくつかの側面を評価したヒトまたは動物の研究が含まれた。症例報告およびシリーズは除外した。研究の質は、開発された臨床試験の方法論的スコアによって評価された。
結果: 当初14件の記事が検索されたが、最終的には12件しか選択されなかった。CAOTは、従来の矯正歯の動きと比較して、歯の動きを2~2.5倍に加速することが判明した。CAOTは歯周組織に対し安全であり、歯根吸収のリスクはほとんどない。局所的な歯槽海綿骨の代謝回転および硝子化領域の欠如は、CAOTの生物学的説明として許容されたものであった。
結論: コルチコトミーによる歯列矯正治療は歯の動きを加速することが判明した。今後、長期間ランダム化臨床試験が依然として必要とされている。
(担当者より)
現在の日本の矯正歯科界においては、「エビデンス(学術的な根拠)に基づいた治療を」と叫ばれてはいるものの、確たるエビデンスは少なく、ネット上などでは自院に都合のよい商業主義的な文言が散見されるのが実情です。矯正歯科治療は、サイエンスであるがアート的な側面も持ち合わせること、手技依存的でエビデンスの検証が困難であることなどを差し引いても、今後確たる根拠のない治療は行われるべきではないと私は思います。
今回は、我々が長年追求しているテーマである「スピード(加速)矯正」について、何がはっきりとしたエビデンスなのかを再確認するために、単独の論文ではなく、システマティックレビュー(そのテーマに該当する多数の論文の体系的なまとめ)のまとめを行ってみました。
まずは、検索エンジンを使って、コルチコトミー、システマティックレビューで過去3年間の論文を検索しました(これは一般の方でも簡単にできます。「Pub Med」などを検索しキーワードを入れるだけです)。そして12論文がヒットし、その抄録(要約)を精読した結果、全ての論文で、「コルチコトミーは矯正歯科における歯の移動を加速する」と結論づけられておりました。また、今日ある他の手段による加速効果は、低レベルレーザーがやや効果的である可能性がある程度であることが示唆されておりました。
その結果については、我々の中では当然予想された事実なのですが、ここまではっきり結論が出ると、コルチコトミーを否定してきた少数の先生方にぜひ現実を直視して頂きたいと思ってしまいました。
さて、その12論文の中で、インパクトファクター(論文の価値を決める学術雑誌ごとの基準)を持っていて、興味深い論文を選択し抄読しました。加速効果のみならず副作用や作用機序についても示唆されており、会員にとって有意義な論文であったかと思われます。
(後記)
後日、札幌で開催された第76回日本矯正歯科学会学術大会に参加してきました。そのメイン講演では、「コルチコトミーは歯の移動を加速させる。今後はデジタル化された矯正治療と共に進めば、矯正治療は更なる進化を遂げるであろう」という主旨でヨーロッパ矯正歯科学会の重鎮がお話をなさっておられました。
コルチコトミー(加速効果)とデジタル矯正治療(安全、確実、ロスが無い)の融合は、まさにスピード矯正研究会が数年前から取り組んでいるテーマです。我々の行っている矯正治療が、現在の「世界最先端」であることを再確認したとともに、スピード矯正研究会も今後さらに進化していく必要があると思いました。
(担当 北村 敦)