クレイトン大学カダバーキャンプPAOO編 UT~Prof. Norton講義

先日、アメリカのネブラスカ州オマハで行われたPHIJカダバーコースにスピード矯正研究会のメンバー14人で参加してきました。

このコースはクレイトン大学の歯周病科主任教授の宮本先生、解剖学主任教授ノートン先生によるコースですが、今回は特別にボストン大学の歯周病科主任教授のディバート先生による講義も行われました。

コースは4日間の日程ですが、私を含めスピード矯正研究会のメンバー4人で前日入りしテキサス大学ヒューストン校へ行ってきました。

テキサス大学

テキサス大学ではスピード矯正研究会のアカデミー会員であり、大学の先輩でもあるMin Seiko先生が働いています。Min先生は日本で大学、大学院を卒業した後、アメリカに渡り南カリフォルニア大学ロサンゼルス校の大学院を出て、その後テキサス大学ヒューストン校歯周病科のAssistant Professor/Preceptorship(臨床准教授)に抜擢されました。

Min先生はアメリカ歯周病学会で最も権威のある賞を受賞するなどアメリカの第一線で活躍している歯周病専門医です。昨年、スピード矯正研究会に招待し、アメリカで行われている最先端の技術について講演していただきました。

スピード矯正研究会の会員と

スピード矯正研究会には世界で活躍する先生が何人も所属しています。

また、スピード矯正研究会ではMin先生のように海外から著名な先生を招待し、矯正の勉強に限らず幅広く勉強を続けています。

Min先生には、診療の合間にテキサス大学の病院内を案内していただきました。夜は一緒にテキサスのステーキを食べながら様々な話をしました。テキサス大学での診療の制度や研究のシステムの日本の大学との違い、そして歯科医師の教育についてなど貴重な話を聞くことが出来ました。Min先生からは年も近いこともあり多くの刺激を受けました。ヒューストンへの滞在は1日だけでした充実した時間を過ごすことが出来ました。

ヒューストンでの滞在はあっという間に過ぎ、翌日からオマハに入りました。

オマハはアメリカ中部の都市で、 “オマハの賢人”として有名な大富豪のウォーレン・バフェット氏の出身地です。

オマハには観光地はほとんどありませんが、クレイトン大学の野球チームのホームスタジアムがあり、そこではカレッジ・ワールドシリーズが開催されていて、アメリカの大学野球の聖地としてシリーズの時期には非常に多くの人が集まります。また、ウォーレン・バフェット氏のバクシャ―・ハサウェイの株主総会はオマハで開催されます。株主総会にあわせ4万人を超える人が集まるとの事です。オマハは普段は非常に静かな町ですが年に数回は大きな賑わいを見せるようです。

また、オマハはステーキが有名でオマハステーキといえばアメリカでは誰もが知る高級ブランドです。最近、日本でも霜降りではなく赤身の熟成肉のステーキがブームとなっていますが、ミディアムレアに焼かれたオマハステーキは本当に絶品でした。

 

今回のコースはオマハにあるクレイトン大学で行われました。今回のカダバーコースのメインは実習ですが、それだけではなく、実習の前にしっかり講義があります。講義を担当して下さったノートン先生は歯科医師であれば誰もが見たことのある解剖学の聖書“ネッター解剖学”の著者です。ノートン先生の講義は、本にも用いられている絵を用いて臨床的な観点から重要な頭頚部の骨、神経、血管、筋肉を順々に説明して下さり、とてもわかりやすいものでした。また、トラブルが起こりやすい部位など重点的に話をして下さり、非常に勉強になりました。

ネッター解剖学

私は昨年もこのコースに参加して解剖の勉強をしてきました。矯正専門医でもより良い治療を求めていくと、コルチコトミーや矯正用アンカースクリューの埋入などに関する外科の知識や、それに伴う顎顔面領域の解剖の知識が必要不可欠となってきます。矯正医は一般歯科診療をされている先生と比べ、解剖や外科の知識が少ない先生が多いと思います。

昨年にコースの募集を見た時、まさに自分が求めているものだと思い参加を決めました。解剖実習は学生の時に行って以来でしたが、歯科医師になってからずっと顎関節や口腔周囲の解剖をもう一度行いたいと思っていました。昨年、参加してみて改めて解剖学の大切さを認識し、今回の参加に至りました。

 

私達臨床医は、新しい技術や材料の勉強に力を入れ、解剖のような基礎の勉強を疎かにしがちです。アメリカでも解剖をしっかり理解せずに外科処置を行ったことで大きな事故が起こっているようです。中には死に至るものまであります。ウォーレン・バフェット氏の言葉に“Risk comes from not knowing what you’re doing. リスクとは、自分が何をやっているのかよくわからない時に起こるもの”というものがあります。これは、株や他の投資において自分が良く理解していないところには手を出すなというものですが、治療に関しても当てはまるものです。利益に目がくらみ知識が無いに関わらず、手を出してしまう先生も実際に多くいます。

しかし、何かあった時に被害を受けるのは患者であり、あってはならないことです。私達、スピード矯正研究会のメンバーは、そうならないように日々研鑚を行っています。

今回の4日間のコースは本当に充実したものでした。今回学んだ事を日々の臨床にいかし、患者にとって良い治療を行えるように励んでいきたいと思います。

銀座矯正歯科 山田 邦彦