スピード矯正研究会2019年総会 山口先生特別講演

矯正学的歯の移動速度亢進メカニズムの解明

―低出力レーザー、バイブレーション、皮質骨切除術の比較―

山口 大

歯科矯正学の進歩により歯列や顎の不正を矯正しようとする成人の患者数は増加している。しかし、成人患者は顎骨の成長・発育のコントロールに適切な時期を完了しており、 歯の移動範囲が歯槽部に限局されるため治療が複雑になる傾向にある。さらに、成人の歯槽骨は若年者に比べて厚く、海綿骨量と血液供給量が減少するため、歯の移動速度が緩慢になり、治療期間が長期化するなどの問題がある。

矯正治療において歯の移動速度を促進する方法として、低出力レーザー照射、バイブレーション、皮質骨切除術などがある。演者のグループは矯正学的歯の移動速度亢進メカニズムを解明する研究の一環として、上記の3方法をラットにおける実験的歯の移動時に施術し、牽引歯の移動距離の測定と骨代謝関連因子のタンパク発現を細胞生物学的に検討した。さらに、in vitroにおいて培養歯根膜細胞の炎症性サイトカインやアポトーシス誘発因子の産生・遺伝子発現についても検討した。

本講演では歯の移動速度の促進メカニズムについて、これまでに得られた知見を紹介させていただき、矯正治療の安全性の向上と治療期間の短縮を可能にするために、先生方のご批判を仰ぎたいと存じます。本講演の発表にあたり、開示すべき利益相反はありません。