2024年スピード矯正研究会総会と特別講演
2024年スピード矯正研究会総会と特別講演(大坪邦彦先生)
スピード矯正研究会の総会と特別講演が開催されました。
総会では、2024年の主な活動報告がありました。
2024年1月には、メンバーが2年に亘って編集会議と原稿の執筆を行ってきた書籍「加速矯正による治療期間短縮のコンセプト」が発売されました。
加速矯正の歴史、エビデンス、ガイドライン、手技と治療例を詳しくまとめた本は世界にも類を見ず、矯正歯科医師のみだけでなく一般歯科医師からも多くの反響がありました。
日本の大学や学会では加速矯正に関する講義・講演がないため、加速矯正の技術や知識は英語論文を読むか、海外の学会や講習会に参加しなければ得られませんでしたが、本書は日本語で分かり易く解説されており、多くの先生に加速矯正について学んで頂けるようになりました。
加速矯正治療が日本でも広まり、治療期間に悩む多くの患者さんが喜ばれることを期待しています。
書籍に関連して、執筆者全員による出版記念講演会、斎藤・桃沢による東京医科歯科大学での講演、崔による日本大学での講演が行われました。
また、ヨーロッパ舌側矯正歯科学会(ESLO)においては、崔の加速矯正治療の講演が行われ、海外の先生からも多くの評価を頂いたことはとても喜ばしく誇らしい記憶です。
また、ESLOでは、メンバーの7名が厳正な症例審査と口頭試問に合格し、ヨーロッパ舌側矯正歯科学会認定医を取得しました。
総会の後に大坪邦彦先生による特別講演が開催されました。
大坪先生は東京医科歯科大学矯正科の臨床教授を長年務められ、マルチブラケット矯正装置のニッケルチタン合金ワイヤーに関する研究や臨床応用においての第1人者です。
このワイヤーの製品は多くあり、でこぼこを並べる時、抜歯したすき間をつめる時、フィニッシングの細かい歯の位置の調整時など一般的に広く使用されていますが、詳しい特性や発現する矯正力について深く理解されずに使用されている場合があります。
そこで、このたびの講演で超弾性型ニッケルチタン合金ワイヤーの機械的特性を丁寧に解説して頂きました。
超弾性型ニッケルチタン合金ワイヤーは、温度により特性が変化する形状記憶合金であるため、手で触ったワイヤーの硬さと口の中で発現される矯正力は大きく異なります。
また、どんなに曲げても発現する力の大きさが変化しないので、著しいでこぼこに装着しても矯正力は一定です。温度変化に対して力の変化(応力ヒステリシス)が大きいワイヤーと変化が小さいワイヤーがあり、製品ごとの特性を理解してそれぞれのシチュエーションで使い分けることで、より効率的に歯の移動が行えることをあらためて理解しました。
矯正治療期間のコントロールは簡単ではなく、歯の移動の生物学的、生化学的な知識、装置や歯にかかる力の物理的な知識とコントロール、加速矯正治療の知識と技術、治療全体の流れを管理するマネジメントなど、学ぶ必要があることは多岐にわたります。
スピード矯正研究会では、メンバーによるプレゼンテーションの定例会、海外の学会や講習会への参加、また、それぞれの専門家を招聘しての講演会を行うことでメンバーの歯科医師のレベルアップに努めています。