要約5月勉強会

Frontiers of
Oral Biology vol.18

Tooth Movement

Section 3 : Stability
and Retention
Will, L. A.

安定性と装置除去

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矯正治療とは歯並びを治療することにより、噛み合わせと見た目の改善をすることです。しかし、矯正治療が終了し保定装置(後戻り防止装置)を担当医の指示通りしっかり長期間にわたり使用しても筋肉、加齢、習癖などにより後戻りを起こしてしまうことがあります。

後戻りに関しては長年、様々な研究がなされているが安定性を実証するための十分なエビデンス(根拠)がありません。そこで多くの研究者が後戻りを起こす可能性のあるものに対して調査を始めました。

Atackらは固定式と取り外し式の保定装置について調査しました。

矯正治療終了時と終了1年以上経過した者の後戻りを比較したところ、固定式で0.65mm、取り外し式で1.06mmだったが統計学的に有意な差は認めなかったとのことでした。この論文は保定装置による後戻りの差はないとしています。

Reitanは矯正治療中の歯周靭帯(歯根の周りの繊維)は下の図のように伸展し矯正治療後にも長期間残存することを報告しました。

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歯が矯正治療によって正しい位置に並んでも歯周靭帯が伸ばされたゴムのような働きをし、歯の後戻りを起こしてしまうことが示されました。

Edwardsらは伸展した歯周靭帯を切断することにより元の状態に戻ることを発見しました。さらに、似た歯並びの患者を320人集め矯正治療を行い歯周靭帯を切除しないグループと切除するグループに分け後戻りの量の比較を行いました。この2つのグループの治療は1人の歯科医師によって行われ、取り外し式の保定装置が使用されました。

治療前の叢生量(ガタガタの量)と比較すると切除しないグループでは治療後4~6年で平均42%(2.29mm)、切除するグループでは平均14%(0.88mm)の後戻りを示し統計学的な有意差が認められました。

また矯正治療、歯周靭帯の切除を行うことによる歯肉退縮も起こりませんでした。

この結果から、矯正治療後の後戻りは完全に防ぐことはできないが歯周靭帯を切除することにより歯肉退縮を起こすことなく後戻りを減少させることがわかりました。

コルチコトミーは歯の動きを加速させ治療期間を短縮できることが様々な研究、論文から知られています。その術式は歯周靭帯を切除します。

つまり、コルチコトミーを併用した矯正治療は期間を短縮するだけではなく治療後の後戻りを減少させ長期的に歯並びを安定させる可能性があることがわかりました。