第84回日本矯正歯科学会学術大会
2025年9月29日より10月1日まで第84回日本矯正歯科学会学術大会が開催されました。
当大会で桃沢はスピード矯正に関する症例展示の学会発表を行いました。
発表のタイトルは「上顎前歯の短根を伴う上下顎前突をコルチコトミ―を併用して歯根吸収の抑制と口唇形態の改善を達成した症例」です。

この発表の背景には、矯正治療の副作用・リスクの「歯根吸収」があります。
矯正装置で歯根に力を与えて、周囲の骨の代謝を促すことで骨の吸収のリモデリングが起こり、結果として歯の移動が達成されますが、その過程で歯根の一部も吸収されることをいいます。矯正治療で短くなった歯根は元に戻すことは出来ません。
力の大きさが強すぎると歯根吸収を引き起こすことは明らかになっていますが、それ以外の要因は治療期間や歯の移動距離、骨の形態や骨密度などの関与が考えられます。
矯正治療を始める患者さんの中には、歯根の長さが元々短い方がいますが、矯正治療によってさらに歯根の長さが短くなると歯の寿命に影響しかねないので、治療には十分な配慮が必要です。
一般的には、弱い力でゆっくり時間をかけて歯を動かしたり、歯の移動量が小さくなる治療方針にすることが多く、その結果、患者さんは治療期間や治療結果に妥協することになります。
このたびの発表の患者さんは、上顎の前歯の歯根の長さが平均の1/2以下でありながら、著しい歯の前突を伴っていました。
口唇の前突を改善するためには、前歯の後方移動量を大きくしなければならず、歯根吸収のリスクが高い症例です。
このような症例に対して、コルチコトミ―を行うことで歯根周囲の骨密度を低くし、また、治療期間が短縮されることで歯根への影響は小さくなります。
本症例は23歳の成人で小臼歯を4本抜歯し、コルチコトミ―を行いました。治療期間は1年4ヶ月で歯根吸収することなく、上下顎前歯の後方移動を行い口唇の前突の改善が達成されました。
歯根が短い理由で矯正治療をあきらめていた患者さんにとってコルチコトミ―が有効であることが示唆されました。
矯正歯科学会会員にコルチコトミ―の有効性が共有され、一般的に普及することを期待しています。
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桃沢 尚


