JOP8月号に掲載
コルチコトミーとアンカースクリュー併用の澤田大介先生の症例がJOP8月号に掲載されました。
歯科矯正用アンカースクリューを利用した歯槽性上下顎前突の非抜歯治療
澤田大介(さわだ矯正歯科クリニック 京都、スピード矯正研究会)
大西奈緒、加藤ゆい、岩田明子(さわだ矯正歯科クリニック 京都)
深澤 真一(銀座矯正歯科 東京、スピード矯正研究会)
はじめに
アンカースクリューを利用した矯正歯科治療によって歯列弓全体の後方移動が可能となり、さらに『下移動をさせることによって、側貌の改善が下顔面を増大させずに非抜歯でも行うことが可能となってきた。その際には、前歯の圧下、遠心移動が大きくなるため、歯肉退縮等歯周組織への配慮、歯根吸収リスクへの配慮も行いながら矯正歯科治療が図られるべきである(図1)。
歯槽性上下顎前突とは、上下顎前歯が前突して口唇が突出した咬合である(図2)。いわゆる口ゴボと言われる状態である。骨格的特徴として、上下の口唇が突出しているが、骨格的には下顎骨が後下方へ回転してハイアングルである(1~4)。歯槽性上下顎前突は、具体的には上下の前歯が唇側傾斜して歯列弓全体が前方にあり、上下顎臼歯の近心舌側傾斜による歯列弓の狭窄傾向にある。ハイアングルケースが多く咀嚼筋発達不足で開口姿勢である。さらに口唇の突出による口唇の閉鎖不全がある者は、機能面からも審美面からも改善が必要である。
上下顎前突は、前後的な歯の位置異常に着日されるが、それだけでなく、形態的には、上下顎前歯の過萌出、下顎骨の開大、下顎下縁平面の急傾斜など垂直的要因が開咬患者の顎態に類似している。
機能的にも咀嚼筋の発達不足、開口姿勢、口唇閉鎖不全が見られる。したがって、治療方針としては、開咬治療に対する方針と同様にアンカースクリューを利用した上下顎歯列弓の遠心移動のみならず、歯列の圧下移動を十分に行うこととした。成人矯正の問題点として、
(図1)
TAKE HOME!
- アンカースクリューを利用した歯列弓全体の圧下、遠心移動によって、歯槽性上下顎前突は非抜歯で5症例平均でセファロ上で上唇6mm、下唇8mmの側貌の改善を得た。
- 予後の安定性は保定2年経過時でも軽度の後戻りが見られたがほぼ良好であった。咀嚼訓練で後戻りを防止した。
- 大臼歯の圧下、遠心移動では前歯が挺出しやすいため、ジグリングによる前歯の歯根吸収に注意。前歯部の圧下用アンカースクリューが必要。
- 前歯の歯肉退縮のリスク軽減のため、phenotype改悪につながる歯列弓の拡大には注意を要する。
(図2)
上下顎前突の特徴
◆開口姿勢、舌の前方位に起因した
◆上下顎前歯の突出、挺出による上下口唇の突出
◆上下顎臼歯の近心舌側傾斜
◆上下顎歯列弓の狭窄傾向
◆ハイアングルケースが多く、口唇閉鎖が困難
◆咀嚼筋の発達不足→開口姿勢→低位舌