2018年3月29日 スピード矯正研究会セミナー

可視化時代におけるデジタルソリューションの展開

講師: 医療法人幸加会 スギモト歯科医院

院長 杉元敬弘先生

講演のトピックス

・CBCTの撮影画像(DICOMデータ)とスキャニングにより得られた画像(STLデータ)の扱いと統合の重要性について

・寿谷先生のシステムをデジタル化するための開発

・インターディシプリナリーアプローチを可能にするデンタルソリューションの展開

杉元先生の講演の前に銀座矯正歯科の中嶋先生から、矯正治療における革新的なデジタルシステムについて紹介をしていただきました。

今日、CBCTの普及とデジタル技術の進歩により、これまで判断が難しかった治療後の歯槽骨や顎骨と歯根の関係を予測出来るようになり、矯正の治療計画の立案が大きく変化しています。

また、デジタル上でゴールを予測出来るため、各分野の専門医同士の連携により複雑な症例への対応も可能となってきています。さらに、デジタル上でインプラント埋入用のガイド、矯正のブラケットやアライナー、矯正用ワイヤーなどの作成も行われるようになっています。

これらを行うためにはCBCTで撮影したDICOMデータと口腔内スキャンしたSTLデータを組み合わせる必要があります。しかし、未だその精度は高いものではありません。精度が低いものを用いれば、シミュレーションの意味をなさず、正確な技工物も作成出来ません。実際インプラントにおける現行するデジタルシステムには、信頼できる精度でないものもあるようです。

杉元先生はデジタル専門の技工士(和田精密歯研)と連携し、より精度を高めるシステムの開発を行ってきました。今回、精度の高い3D画像の作成方法について、そして杉元先生も所属しているP.G.I.の創設者である寿谷先生のシステムのデジタル化について講演していただきました。

杉元先生のシステム

・医科用CT(CT値が特定されており正確な画像が得られる)を用い、顎関節も含め撮影する。

・歯冠形態は石膏模型をスキャニングしたものを用い、テンプレートを用いてCT画像に入れ込む。

・セファロ、CT画像、咬合器を同一基準面で処理する。

寿谷先生はサジタリウス3000を用い顎関節のX線撮影を行い、顆頭位を評価し、咬合器とコンダルポジショナーを用いて顆頭を理想的な位置へ調整していますが、これを杉元先生はデジタル上で再現する方法を開発しました。

複雑な包括歯科治療が必要な患者に対しては、杉元先生のシステムを用いることで顎顔面形態や歯と歯根形態を正確に測定でき、顆頭位も考慮し治療計画を立案することが出来ます。

また、治療開始前にデジタルである程度根拠のあるゴールの予測が出来れば矯正、インプラント、補綴の範囲を確定でき治療期間の短縮やリスクを低減につながります。

デジタルは若い歯科医師の手技や経験の不足を補え、診断の精度や治療の完成度を上げることが出来ます。また、治療の再評価も容易になります。そして、複雑なシステムをデジタルで再現することで時間や費用の削減になるなど、術者の先生や患者様にとってデジタルの恩恵は非常に大きいと思います。

しかし、まだデジタルは完璧なものではなく、これからも研究と進歩が必要なものであると改めて感じました。スピード矯正研究会でも今後のテーマとしてデジタルを積極的に取り入れ研鑚していきたいと思います。

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銀座矯正歯科 山田 邦彦